前歯のインプラント治療は難しい?
注意点や費用相場・メリットとデメリットについて解説
「前歯のインプラントは治療が難しい?」
「見た目で周りに気付かれる?」
上記のような悩みをお持ちでないでしょうか?このページでは前歯のインプラントについて、難しいと言われている理由やメリットとデメリットを解説します。
前歯のインプラントを検討しているけど、不安が残るという方は最後までご覧ください。
前歯のインプラント治療が難しいと言われる理由は?
前歯のインプラント治療は、奥歯と比較して気を遣うべきポイントが多いことから治療が難しいと言われています。
例えば、前歯の1本だけインプラントにした場合、歯の色や形がほんの少しでも違うと違和感がでてきます。実際、他医院でインプラントしたものの、イメージしていた歯と違って当院でやり直しを希望される方もいらっしゃいます。
実は、自然の歯と分からないくらい色や形を合わせるのは、歯科医師と歯科技工士の高い技術が必要です。またお口の状態によっても仕上がりに差ができることもあります。事前に、どのような治療結果になるか、しっかり歯科医師と相談して、納得した上で治療に進んで頂くことをおすすめいたします。
本章では、そんな前歯のインプラント治療が難しいと言われる理由について、詳しく解説します。
前歯は少しの差で見た目に違和感がでるため
前歯のインプラントの場合は特に、周囲の歯との色合わせや歯の形、大きさなど、患者さまのご要望に応える仕上がりに調整しなければなりません。色はもちろん、丸みがある形なのか、角ばっている形なのか、大きさや厚みなど、ほんの少しの差で違和感が出るため細心の注意が必要です。
治療後になって、想定していた歯と異なっていたと後悔しないように、事前に歯科医師と治療のゴールをしっかり相談してから治療を開始してください。
前歯は顎の骨が薄く治療に技術が必要であるため
前歯は奥歯に比べて骨が薄いため、インプラントの土台となる骨が少なかったり、薄かったりする場合があります。
骨が薄い場合には骨を増やす治療が必要ですが、そのためには技術と経験が重要です。
また、下の前歯は上の歯と比べると細くて小さいので、インプラント埋めるスペースも小さく、特に慎重に手術する必要があります。
前歯をインプラントにする3つのメリット
前歯はお顔の印象を大きく変えるだけではなく、食べ物を噛み切る重要な役割を担っています。また、発音にも影響します。
その分治療も難しい点が多い前歯のインプラントですが、治療することで主に以下のメリットがあります。
- 自然で美しい見た目になる
- しっかり噛める
- まわりの歯に負担がかからない
それぞれ以下で詳しく解説します。
自然で美しい見た目になる
前歯のインプラントは見た目が美しく自然に仕上がるのが大きなメリットです。人口の歯根(インプラント本体)は顎の中に埋め込まれ、目に触れることはありません。
被せ物(見えている歯の部分)はセラミックで作製できます。セラミックは、色の調整がしやすく、また自然の歯に近い透明感を持ち合わせるなど、まわりの歯と違和感なく仕上げられます。保険のブリッジの場合、金属の上にプラスチックを貼り付けて作りますが、その場合、色を合わせることは難しく、徐々に変色もしていきます。また、部分入れ歯の場合、金属のバネがあり、前歯の場合は特に目立ちます。
しっかり噛める
歯を失った時の治療の中で、インプラントの治療だけが、噛む力を取り戻せます。ブリッジの場合は、両隣の歯が噛む力を負担します。また入れ歯の場合は、歯茎にのせて金属のバネで両隣の歯に引っ掛けるので、両隣の歯に負担がかかり、噛む力も弱くなってしまうでしょう。インプラントの場合は、インプラントが顎の骨にしっかり固定されて噛む力を支えます。
まわりの歯に負担がかからない
入れ歯は、左右隣の歯に入れ歯を金具でとめています。歯茎の上に補った歯をのせている状態です。
ブリッジの治療は、健康な隣の歯を削り、失った歯の部分を左右の歯で支えています。
健康な歯は、削られることによって弱くなり寿命が短くなったりします。インプラントは独立しているため、隣の歯を削る必要はなく、歯茎やまわりの歯に負担をかけません。
前歯をインプラントにする2つのデメリット
また、前歯をインプラント治療するデメリットも存在します。前歯をインプラント治療するデメリットは主に以下の2つが挙げられます。
- 顎の骨が薄いため骨の造成が必要な場合がある
- 歯茎が下がらないために歯茎を増強する治療が必要な場合がある
それぞれ以下で詳しく解説します。
顎の骨が薄いため骨の造成が必要な場合がある
前歯の顎は骨が薄い場合があり、その場合インプラントを入れる難易度が上がります。 骨が足りないときは、骨の造成(骨再生治療)をする必要があります。 骨の薄いところに無理やりインプラントを入れたら、治療後に歯茎がさがりやすくなったり、インプラントが抜けたりする可能性があるからです。 また、前歯は骨の造成が必要なことが多く、骨再生治療は別途で手術費用がかかります。(骨が十分ある場合は、骨の造成は必要ありません)
歯茎が下がらないために歯茎を増強する治療が必要な場合がある
歯茎はインプラント治療の際に非常に重要な要素です。
インプラントを入れる部位の骨や歯肉が薄いと、その部分の歯茎が下がるリスクがありますので対処が必要です。
骨や歯肉が薄い場合には、インプラント手術とあわせて、骨を増やす治療や歯茎を増やす治療が必要ですが、対応していない歯科医院も多くあります。
骨や歯肉が十分かどうか、歯肉が下がってしまう可能性に関しても歯科医師に確認することをおすすめします。
前歯のインプラントの治療期間は?
インプラントの治療にかかる期間は、骨が十分にある場合、早くて3ヵ月から6ヵ月程度です。
骨の造成をする場合は、インプラントと骨の造成を同時にする場合と、骨の造成後にインプラント治療を入れる場合によって治療の期間が違ってきます。お口の状況により、どちらの方法が適切な治療法なのかを説明します。
以下は治療ごとの目安となる治療期間の例です。
骨の造成を しない場合 |
3ヶ月〜6ヶ月 |
骨の造成を インプラント治療と同時にする場合 |
5ヶ月〜7ヶ月 |
骨の造成後に インプラント治療をする場合 |
・骨の造成: 3ヶ月〜9ヶ月 ・インプラント治療: 4ヶ月 |
また、治療中は一時的に仮の歯を入れて見た目を整えます。
前歯にインプラントを1本入れる時の費用は?
ここまでインプラント治療の情報を見て、実際に治療を検討している方もいると思います。 検討している方は実際の費用面も気になるかと思いますので、ここからは実際にかかる費用を事例をもとに紹介します。
前歯にインプラントを1本入れる際の費用は、骨造成が必要であるかどうかで変動します。
あごの骨が十分にある場合
歯のない部分にインプラントを1本挿入してかぶせ物をします。
インプラント
かぶせ物(セラミック)
骨造成をする場合
骨が不足している部分に骨を増やし、歯のない部分にインプラントを1本挿入してかぶせ物をします。
骨を増やす治療
インプラント
かぶせ物(セラミック)
※骨造成の量によって異なります。
前歯のインプラント治療の流れ
前歯の治療の流れは、歯茎の状態により主に以下の2パターンあります。
- 骨が十分にあり、歯茎も健康な場合
- 骨が少なく、骨の造成をする場合
それぞれ治療の流れが異なりますので、ここでは2つのインプラント治療の流れを解説します。
骨が十分にあり、歯ぐきも健康な場合
骨が十分にあり、歯茎もしっかりしている場合は、以下の流れでインプラント埋入手術をします。
1.インプラントを埋め込む手術2.インプラントの頭出し手術
3.歯茎の治癒期間
4.かぶせ物の作成
5.かぶせ物の装着
1インプラントを埋め込む手術
歯ぐきを開き、あごの骨に穴を開け、インプラント体を埋めて仮の歯にあたるもの入れます。
骨とインプラントがくっ付くのを待ちます。
待機期間は3~6か月程度で、その間月に1回程度通院して頂き、傷口やインプラントの状態を確認します。
2インプラントの頭出し手術
歯ぐきを開き、インプラントに「かぶせ物(人工歯)」を取り付けるためのつなぎの部品である「土台(アバットメント)」を取り付けます。
3歯茎の治癒期間
2次手術で手術した歯ぐきが治るまで待ちます。
待機期間は10日から2週間ほどです。
4かぶせ物の作成
かぶせ物を作るための型をとります。
かぶせ物ができたら、口の中で合わせ、調整します(10~2週間程度)
5かぶせ物の装着
当院併設の技工所で作られたかぶせ物を装着して治療は完了です。
骨が少なく、骨の造成をする場合
骨が少ない場合はインプラントを埋め込むことが難しいため、骨の造成手術をする必要があります。
1.インプラント埋入と骨の造形手術2.インプラントの頭出し手術
3.歯茎の治癒期間
4.かぶせ物の作成
5.かぶせ物の装着
骨の造成期間:3ヵ月〜9か月+インプラント結合期間が必要です。
また、あごの骨の状態によって手術の時間も治療の期間も患者さまにより異なります。
1インプラント埋入と骨の造形手術
1次手術をすると同時に、骨の造成をします。もしくは、事前に、骨の造成の治療をします。
骨ができ、インプラントがあごの骨と結合するのを待ちます。
2インプラントの頭出し手術
歯茎を開き、インプラントに「かぶせ物(人工歯)」を取り付けるためのつなぎの部品である「土台(アバットメント)」を取り付けます。
3歯茎の治癒期間
2次手術で手術した歯ぐきが治るまで待ちます。
対期間は10日から2種間ほどです。
4かぶせ物の作成
2次手術で手術した歯茎が治るまで待ちます。
待機期間は10日から2週間ほどです。
5かぶせ物の装着
当院併設の技工所で作られたかぶせ物を装着して治療は完了です。
前歯のインプラントの症例 | 前歯にインプラント1本埋入 20代女性
他医院で前歯を抜かないといけないと言われ、インプラントを考えていたところ、当院を紹介されてご来院いただきました。
初診時と治療後
右上の前歯部にインプラントを1本埋入しました。
右上の前歯がほとんど根っこしか残っていない状態で、仮歯をつけて来院されました。
インプラント治療後の写真です。
(治療したのは、向かって左側の前歯です。)
前歯のインプラント治療から約10年後の状態
インプラント治療後、9年たちましたが、歯も歯茎も綺麗なまま保たれています。
前歯をインプラント治療する医院を選ぶ際のポイント
前歯のインプラント治療は技術的にも難易度が高いため、歯科医院選びには慎重になる必要があります。
歯科医院を選ぶ際には以下の2点のポイントを押さえましょう。
- 前歯のインプラントの実績が多いか
- 信頼できる担当医か
それぞれ理由を解説しますので、これからインプラント治療を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
前歯のインプラントの実績が多いか
インプラントの症例が多くても、前歯の治療の実績や経験が豊富とは限りません。前歯のインプラントの実績が多い歯科医院を選ぶことが重要です。
また、歯科用のCT検査の有無など事前に調べ、実際に会ってカウンセリングを受けられることをおすすめします。
信頼できる担当医か
前歯は外見にも影響する重要な部分なので、しっかりと治療内容を説明して悩みにも丁寧に応えてくれる医者を選ぶ必要があります。
治療の技術がすばらしくても、検査や診断、治療の計画などの説明がないのであれば施術後のトラブルに発展するためです。
メリットだけではなく、どのようなリスクが考えられるのかといったデメリットまで伝えてくれることも信頼できる歯科医を見分けるポイントでしょう。
前歯のインプラントに関するよくある質問
ここまで、前歯のインプラント治療は難しく、見た目にも影響するため信頼できる歯科医院を選ぶ必要があると解説しましたが、ここではよくある質問に回答します。
前歯の治療はインプラントとブリッジどっちがいいですか?
前歯の治療は少しの差で見た目に影響します。見分けるのが難しいほど自然な歯を忠実に再現できるインプラントがおすすめな場合が多いです。
ブリッジは保険治療で安く治療できるメリットがありますが、見た目で自然の歯でないことがわかってしまいます。また、両隣の歯が健康な場合、健康な歯を犠牲にしてしまいます。
またより自然の歯に近い見た目にできるセラミック素材のブリッジもありますが、保険適用外になってしまう上に、1本歯がない場合でも、両隣の歯の分のセラミックの費用がかかります。
ただし、骨や歯茎の状態や、両隣の歯にすでに被せ物が入っているなどのお口の状態によっては、ブリッジがおすすめな場合もありますのでご相談ください。
前歯のインプラント手術で失敗するリスクはありますか?
インプラント手術で失敗するリスクはゼロとは言えませんが、歯科医院選びをしっかりとすることでリスクを限りなくゼロに近づけることは可能です。
歯科医師の技術不足により、インプラントが計画通りの位置や深さや角度で埋入できなかった場合には、噛み合わせが悪くなるリスクがあります。
そのため、実際の症例をカウンセリングの段階で聞き、信頼できる実績がある歯科医師を選びましょう。
前歯のインプラント治療中は仮歯をつけられますか?
手術後から最終的な人工歯を入れるまでの期間は仮歯を入れて、生活に支障が出ないようにします。見た目を整えられるだけでなく、歯茎を安定させる役割や、細菌から守る役割もあるため仮歯を装着します。
素材は最終的につけるセラミックではなくプラスチックで、耐久性には劣りますが、白色で周囲の歯と比べて違和感は少ないため、安心して待機期間を過ごせます。
前歯のインプラント治療は保険適用されますか?
インプラントに保険が適用される症例は、事故の外傷などが原因で顎の骨を多く失った場合や、生まれつきの疾患など特殊な場合にのみです。
一般的な虫歯や歯周病などが原因の場合は自由診療での治療となります。 これはインプラントにかかわらず、仕上がりをよくする治療に関しては保険適用外となります。
前歯のインプラントの寿命は何年ですか?
インプラントの寿命は一般的には約10年〜15年と言われています。
メンテナンスをかかさなければ15年〜30年使える事例もあり、長持ちさせるために定期的な検診とケアを欠かさないようにすることが大切です。
部分および全部欠損症例における10~15年の累積生存率は上顎で約 90%程度、下顎で 94%程度である。
歯科インプラント治療の問題点と課題等 作業班(平成26年 3月 31日)厚生労働省委託事業 「歯科保健医療情報収集等事業」
前歯をインプラント治療して後悔することはありますか?
インプラント治療後に以下のような後悔を感じる患者様もいるようです。
- 手入れを十分にできなかった結果、インプラント歯周病なってしまった
- グラグラして不安定に感じる
治療後のインプラント歯周病になってしまう後悔は、毎日のケアを怠らないことで防げます。
しかし、手術後に不安定に感じる原因は、手術した歯科医院が原因として考えられます。前歯は顎の骨が薄いため、インプラントがうまく結合せずに、グラグラと揺れてしまいます。
後悔しないためにも、骨造成治療ができる専門性の高い歯科医院で治療することが重要です。
前歯のインプラントで歯がない期間はありますか?
インプラント治療中には歯のない期間があります。顎の骨にインプラント体(人工のネジ)を埋めたあとに、インプラント体が顎の骨にしっかりと固定されるまで待機期間を設けるためです。
インプラント埋入の手術後、インプラントが骨に馴染むまでの待機期間は2ヶ月〜6ヶ月ほどあります。
しかし待機期間は仮の歯を入れて対処するため周りから気づかれるリスクも少なく、安心して普段通りの生活が送れるでしょう。
前歯のインプラントができない場合もありますか?
虫歯や歯周病がある場合は治療ができません。口内に細菌がある不衛生な状態で治療すると、インプラント歯周病の原因となるため、必ず他の治療が済んでからインプラントの手術をします。
また、18歳未満の方や、妊娠中の方などは歯科医院によっては手術ができない場合があるので、治療を検討されている方は一度ご相談ください。
全身疾患がある方も状態によってインプラント治療ができない可能性があります。
詳しくはこちらをご覧ください。
前歯のインプラントは、見た目に大きく影響します
見えてるかぶせ物の美しさや大きさ、口とのバランスがうまくとれているかなど、少しの違いが、笑顔の印象の大きな違いになってきます。
前歯のインプラントを入れた後、思っていたイメージとちがっていたということがないように、かぶせ物の色や形、歯茎の状態(色・やせぐあい)などを歯科医師とよく話し合うことがとても大切です。骨を増やす必要があるかどうかを必ず確認しましょう。