「インプラントは絶対だめ」と耳にしたことがある方も多いでしょう。この言葉の裏には、治療費やリスクなどが背景にあります。しかし、適切な治療と歯科医院選びをすれば、インプラントは優れた一つの選択肢です。
本記事では、「インプラントが絶対だめ」と言われる理由とその対策、そして後悔しないためのポイントを詳しく解説します。
インプラントとは?特徴を解説
日本歯科医師会によると、インプラントとは人工の材料や部品を体に入れることの総称です。歯科におけるインプラントは、失った歯の機能と見た目を回復させるための治療法です。あごの骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着します。自然の歯に近い咀嚼力や美しい見た目が得られるのが特徴です。
他の治療法と比べても、インプラントは周囲の歯に負担をかけないため、残った歯の健康を守ることができます。これは、ブリッジや入れ歯にはない大きなメリットです。
そんなインプラントの治療ですが、「インプラントは絶対だめ」と言われる理由には、以下の4つのポイントがあります。
- 外科手術によるリスク
- 治療費の高さ
- 治療期間が長い
- 周囲炎のリスクとメンテナンス
外科手術によるリスク
インプラントの治療は、あごの骨に穴を開けて歯の根の部分となる「インプラント体」を埋め込む外科手術です。
外科手術は、手術中に神経や血管を傷つけてしまう可能性や、細菌に感染するリスクなどがあります。
しかし、これらは医師の技術力と経験でリスクを抑えることができます。またインプラント治療では外からは分からない骨や歯肉の中を処置するため、手術前のCT検査などが必須です。
治療費の高さ
インプラントは基本的に保険診療の対象外であり、保険適用の入れ歯やブリッジと比較すると治療費は高額です。しかし、しっかり噛める、残った歯に負担をかけない、見た目の美しさが手に入るのがインプラント治療です。そして、一般的にインプラントの寿命は10~15年と入れ歯やブリッジと比較して長いというメリットがあります。
また、インプラント治療はほとんどの場合「医療費控除」の対象で、費用の一部が戻ってきます。
分割支払いを導入している歯科医院や歯科治療に特化した「デンタルローン」を組む方法もあります。高額な医療費は家計の圧迫だけでなく、今後のライフプランにも影響を与えるためこれらの方法を活用して慎重に検討していきましょう。
治療期間が長い
インプラントの治療期間はブリッジや入れ歯と比較して長いです。この期間にはインプラント体と骨が結合するのを待つ期間も含まれています。治療期間が長く見えてしまいますが、実際の通院回数はそれほど多くはありません。
また、骨を増やす治療が追加で必要な場合、その治療に3~6か月の期間がかかる方もいます。インプラント治療期間に幅があるのは、個人によって骨の状態が異なり、治療内容が異なるからです。
インプラント治療を検討している方は、治療を受ける前の見積もりの段階で、治療期間を歯科医師に確かめた上で治療を受けてください。
インプラント周囲炎のリスクとメンテナンス
インプラントは虫歯にはなりませんが、歯周病に似たインプラント周囲炎にはなります。インプラント周囲炎は、インプラントの周りに炎症が起こる状態で、放置するとインプラントが抜け落ちることがあります。これを防ぐためには、喫煙を控え、歯ぎしりや食いしばりに注意し、日頃の適切なケアやメンテナンスを行うことが大切です。
治療後は歯科医院でのメンテナンスと自宅での毎日のケアが必須です。メンテナンスが面倒に感じる方もいるかもしれませんが、インプラントだけでなく、残った歯の健康維持のためにも継続していきましょう。
インプラント治療を行う際のポイント
インプラント治療を行う際に確認したいポイントは、以下の2点です。
- ほかの治療法と比較する
- 信頼できる歯科医院を選ぶ
ほかの治療法と比較する
歯を失った場合の治療法は、インプラントのほかに入れ歯とブリッジがあります。
ブリッジとは、橋をかけるように両隣の歯を支えにして歯のない部分に人工の歯を入れる治療法です。両隣の歯にも人工の歯をかぶせるために健康な歯を削る必要がありますが、取り外しが必要なく、自分の歯に近い噛み合わせを感じることができます。
入れ歯は着脱できる人工歯のことで、総入れ歯と部分入れ歯があります。
総入れ歯はすべての歯を床(しょう)とよばれるピンクの土台で、部分入れ歯は残っている歯に人工歯を金属のバネで固定します。
インプラント、ブリッジ、入れ歯のメリット・デメリットはこちらです。
治療法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
インプラント | ・しっかり噛める ・見た目が自分の歯と変わらない ・違和感がない ・ほかの歯へ影響がない ・10年以上使用することができる |
・保険適用外なので、費用が高額 ・外科手術が必要でリスクがある ・治療期間が長い |
入れ歯 | ・保険が適用の入れ歯の場合、費用負担が少ない ・治療期間が短い |
・他の歯への負担がある ・咀嚼力が低下する ・固定する金属のバネが目立つ場合がある ・違和感・異物感がある ・5~6年で作り替えの必要がある ・毎日の洗浄が必要 |
ブリッジ | ・保険が適用されるため、費用負担が少ない ・治療期間が短い ・違和感はほとんどない |
・隣り合う歯を削る必要がある ・支える歯によって咀嚼力が左右される ・歯が欠損している数が多いと治療ができない ・7~8年で作り替えの必要がある |
インプラント |
---|
メリット |
・しっかり噛める ・見た目が自分の歯と変わらない ・違和感がない ・ほかの歯へ影響がない ・10年以上使用することができる |
デメリット |
・保険適用外なので、費用が高額 ・外科手術が必要でリスクがある ・治療期間が長い |
入れ歯 |
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メリット |
・保険が適用の入れ歯の場合、費用負担が少ない ・治療期間が短い |
デメリット |
・他の歯への負担がある ・咀嚼力が低下する ・固定する金属のバネが目立つ場合がある ・違和感・異物感がある ・5~6年で作り替えの必要がある ・毎日の洗浄が必要 |
ブリッジ |
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メリット |
・保険が適用されるため、費用負担が少ない ・治療期間が短い ・違和感はほとんどない |
デメリット |
・隣り合う歯を削る必要がある ・支える歯によって咀嚼力が左右される ・歯が欠損している数が多いと治療ができない ・7~8年で作り替えの必要がある |
それぞれのメリット・デメリットを確認し、ご自分に合っている治療を選択することが大切です。
信頼できる歯科医院を選ぶ
インプラント治療をおこなっている歯科医院は年々増加していて、どの歯科医院を選べばいいか迷う方も多いと思います。インプラント治療は高い技術力が必要な治療法のため、治療実績が豊富な歯科医師が在籍している歯科医院を選ぶのがおすすめです。
インプラントの高い技術力のある歯科医院の目安は、年間100例以上の症例があること、学会やセミナーに参加して常に最新の治療法を取り入れていること、検査機器や手術室の設備が整っていることです。
これらの条件が揃っている歯科医院は、クオリティの高いインプラント治療が受けることができるでしょう。
インプラントを行う5つのメリット
インプラントを行う5つのメリットは、こちらです。
- 健康な歯に影響を与えない
- 入れ歯よりもしっかり噛める
- 見た目を美しくできる
- 顎の骨が痩せるのを防げる
- 自分の歯と同じような感覚
健康な歯に影響を与えない
インプラント治療は失った歯のみを治療するため、ほかの健康な歯には影響を与えません。
一方で、ブリッジでは両隣の歯を土台として人工歯3本をかぶせていくため、健康な歯を削らなければならない施術です。部分入れ歯も、残った歯に金属で固定するため負担をかけてしまいます。
削られたり、負担がかかった歯は、寿命が短くなる可能性が大きいので注意が必要です。
インプラントではこのようにほかの歯に負担をかけないことで、周りの歯の健康も守っています。
入れ歯よりもしっかり噛める
インプラントでは歯と歯根まで取り戻すことができるため、ご自分の歯の咀嚼力と変わらない力で噛むことができます。歯根は、噛む力を骨に伝える重要な役割をもっています。インプラント以外の治療法であるブリッジや入れ歯は、歯根がないため咀嚼力がインプラントよりも劣ってしまいます。
すべての歯が生えている方の咀嚼力を100%とするとブリッジでは60%、部分入れ歯では30〜40%、総入れ歯では10~20%程度といわれています。しかし、インプラントではほぼ100%に近い力で噛むことができるためご自分の歯と変わらない力で噛むことができ、食べるものを選ぶことなく食事を楽しむことができることは、生活するうえで大きなメリットです。
見た目を美しくできる
インプラントの人工歯部分にはセラミックやジルコニアなどの素材が使われています。これらの素材は天然の歯に近い見た目で、さらに周りの歯に合わせて色味の調整が可能なため、ご自分の歯と比べてもほとんど見分けがつきません。
入れ歯では固定している金属が見えることがあり、人前で笑ったり食べ物を食べることを躊躇してしまう人もいます。インプラントではそのような心配がなく、見ただけでは歯の治療をしていることが分からず、審美面に優れた治療法です。
顎の骨が痩せるのを防げる
骨が痩せる原因は、咀嚼による刺激が骨に伝わらないことです。歯を失った部分は骨に刺激が伝わらず、歯のない部分の骨が痩せてしまう可能性があります。
インプラントでは歯と歯根を取り戻すことができるため、ご自分の歯と同じ程度の咀嚼力が回復し、骨に刺激を与えます。このことから、インプラント埋入によって顎の骨が痩せるのを防ぐことが可能です。
インプラント治療では骨にインプラント体を埋め込むため、骨が痩せてしまうと治療が受けられなかったり、追加の治療が必要となる場合もあります。歯を失ってしまいインプラント治療を検討している方は、早めにカウンセリングや治療を受けることをおすすめします。
インプラントを正しく理解して治療を判断しましょう
インプラントが絶対だめといわれる理由とその対処法について解説しました。インプラントは治療費の負担やさまざまなリスクもありますが、しっかり噛める・他の歯に負担をかけない・見た目が美しいなどメリットも多い治療法です。
ご自分のライフスタイルと今後の人生設計と照らし合わせて、失った歯の治療法をインプラントにするかそれ以外の治療法にするか、慎重に検討していきましょう。インプラント治療を選択する場合、後悔や失敗を避けるために1番重要なのは歯科医院選びです。
インプラント治療を検討する際には、リスクとメリットを十分に理解し、信頼できる歯科医師のアドバイスを受けることが重要です。後悔しない選択をするために、歯科医院選びは大切にしてください。