「インプラントにしてみたいけど、治療や費用について不安」
「インプラントのデメリットも知ったうえで治療法を決めたい」
こんな悩みを抱えている方もいるでしょう。
インプラント治療にはメリットだけでなく、デメリットや注意しておく点があります。
本記事では、ご自身にあった治療を選んでいただくために、インプラントのデメリットについて解説します。
インプラント治療とは?
インプラント治療とは、自分の歯の代わりに人工の歯の根(インプラント)を埋入し、その上に被せ物を作製して自分の歯のように噛めるようにする歯科治療法です。
虫歯や歯周病、事故などが原因で起こる、歯の欠損に対する治療法として使われます。
インプラント治療に関する詳しい解説はこちらをご覧ください。
インプラントのデメリット
インプラント治療のデメリットには主に以下のような点が挙げられます。
- 治療の期間が長い
- 手術しないといけない
- 治療後はメンテナンスが必要
- 自費の診療の負担が大きい
インプラントのデメリットについて以下でそれぞれ詳しく解説します。
治療の期間が長い
インプラントはブリッジや入れ歯の治療の期間と比較して、治療期間が数ヶ月多くかかります。
・骨が十分にある場合:約4〜5ヶ月
・骨が少ない場合:約7〜13ヶ月
インプラント本体とあごの骨がくっ付くのに時間が必要なため治療期間が長くなります。
また、通院の回数は、手術の日以外に抜歯や経過の診察などで一般的に4〜7回ほどになります。
治療法 | 治療期間 |
---|---|
インプラント | 上あご:5ヶ月 下あご:3ヶ月※ |
ブリッジ | 約2週間 |
入れ歯 | 約1ヶ月〜2ヶ月 |
※あごの骨が少ない方は、3〜9ヶ月程、延びることがあります
手術しないといけない
インプラント治療には、手術が必要です。
手術や痛みへの不安や恐怖心が強い方は、できるだけ避けたい治療方法かもしれません。
しかし、インプラントの手術は入院や全身麻酔の必要がなく、一般的な歯科の麻酔で手術が可能なので、手術の怖いイメージを持つ必要はありません。
当院では、歯科麻酔だけではなくご希望に合わせて、眠っている間に手術が終わる静脈内鎮静法もご用意しています。
手術や痛みが心配という方は、当院の痛みに最大限配慮した治療について以下で紹介しているのでご覧ください。
▶︎ 痛みに最大限配慮した治療
インプラントは痛いのかと疑問をお持ちの方も多いと思います。
インプラントの痛みと、親知らずの抜歯で痛みの違いを比較しましょう。
親知らず治療は、半分が歯茎に埋まって斜めから生えている親知らずの場合は、治療に長い時間を要し、治療中の痛みなどつらい思いをする場合もあります。
また抜歯のあと2〜3日は腫れや痛みが続き、長引く時は1週間ほど痛みが続く場合もあります。
インプラントの手術は、埋め込む時間は15分〜20分程度、歯1本あたりの手術時間は90分前後と、比較的短いです。
痛みや腫れは通常2〜3日は生じる場合がありますが、鎮痛剤や炎症止めで対処できる程度です。
インプラントの痛みについて以下で詳しく解説しています。
▶「インプラントは虫歯治療や親知らずの治療と比べて痛い?」
治療後はメンテナンスが必要
インプラントの治療後は、チェックとメンテナンスは定期的に必要です。
インプラントは虫歯にはなりませんが、他の歯と同様に「歯周病(インプラント周囲炎)」になります。
歯周病で歯を失ってしまうように、インプラント周囲炎で、インプラントが抜け落ちしまうこと(喪失)もあります。
人工物であるインプラントは神経が通っておらず、炎症を起こしていることに気付かない場合もあるので、必ず定期検診が必要です。
インプラントの定着具合や部品の点検、噛み合わせの調整、歯周病の検査や掃除を行います。インプラントを長くお使いいただくためには、この定期的なメンテナンスがとても大切です。
ただし、ブリッジや入れ歯も同様にメンテナンスが必要です。
どちらの治療でも、歯の間や被せ物との間に歯垢はたまりやすく、正しい歯みがきを行っていないと虫歯や歯周病の原因になります。
インプラントやブリッジ、入れ歯のいずれも、家での正しい歯磨きと歯科の検診が必要です。
自費の診療で負担費用が大きい
治療法 | |||
---|---|---|---|
保険 | 約1万円〜2万円 | 約5千円〜2万円 | 適用外 |
自費 | 約5万円〜15万円 | 約15万円〜80万円 | 約30万円〜50万円 |
※保険の場合の費用は3割負担の場合の料金です
※上記はあくまで目安の費用です
インプラントは自費診療になるため、保険適用の入れ歯やブリッジに比べると費用の負担が大きな治療です。
しかし、治療費に違いがある分、それぞれ寿命も大きく異なります。
治療法 | 寿命 |
---|---|
ブリッジ | 7〜8年 |
入れ歯 | 4〜5年 |
インプラント | 10〜15年以上 |
※上記はあくまで目安の期間です
また、入れ歯治療は、隣接する歯に金属のバネを掛けてとめるため、健康な歯に傷がついたり、負担をかけたりします。
ブリッジに関しても、歯のない部分の両隣の歯を大きく削る必要があり、支えになる歯の負担が増えるため、健康であったはずの歯の寿命が短くなるおそれがあります。
それに対して、インプラントは歯がない部分のあごの骨に人口の歯を埋め込み、周囲の歯に負担をかけません。
口内全体の健康状態を保ちやすく、インプラントは10年もつという生存率は90〜96%という良好な成績を残しています。
また、メンテナンスをきちんとすることで40年以上もったというケースもあります。
保険適用外で他の治療方法と比べると治療費用が高額になりますが、耐久性が高く、健康な歯を守ることができます。
インプラントは長期的にみるとメリットが高いと考えることもできます。
また、インプラントの治療費は医療費控除の対象なので、所得等により変動しますが、費用の一部が還付されることがあります。
詳細は以下の記事をご確認ください。
▶インプラントの医療費控除について
インプラントのメリット
インプラントのデメリットについて紹介しましたが、インプラントはメリットが多く、デメリットを考慮してもおすすめの治療法です。
インプラントのメリットは以下の通りです。
- 自分の歯のようにしっかり噛める
- 隣接する健康な歯に負担をかけない
- 天然の歯のような綺麗な歯に回復できる
- 他の治療方法よりも長持ちしやすい
- 入れ歯のような取り外しが不要
- あごの骨が痩せるのを防ぐ
インプラントのメリットについてそれぞれ解説します。
自分の歯のようにしっかり噛める
インプラントは骨から固定されているので、ご自分の歯のように違和感なくしっかり噛むことができます。
隣接する健康な歯に負担をかけない
入れ歯は、両側の隣の歯に金具でとめることで支えており、ブリッジは、両側の隣の歯を削り、被せ物(人工の歯)でつなぎ覆っています。
これらの治療は、本来関係のなかった健康な歯が削られることによって弱くなり寿命が短くなることがあり、負担が大きいです。
それに比べてインプラントは、隣の歯を削ることなく、残っている健康な歯に負担をかけません。
天然の歯のような綺麗な歯に回復できる
入れ歯は、クラスプと呼ばれる金具を隣接する歯に掛けてとめるため、笑った時に金具が見え、ストレスを感じる方も少なくありません。
それに比べて、インプラントは金具が見えず、自然で綺麗な歯を埋めるため違和感なく生活することができます。
第三者から見ても、インプラントをしているか分からないのもポイントです。
また、ブリッジの場合は、保険適用の場合は金属やプラスチックの人工の歯になるので、隣の歯と違和感が生じたりします。
他の治療方法よりも長持ちしやすい
インプラントはメンテナンスをきちんと行っていれば、他の治療方法と比べると長持ちすると言われています。
約10年〜15年以上
約7年〜8年
約4年〜5年
ブリッジも入れ歯も経年劣化の影響で作り直す必要があります。
ブリッジは、接着剤で取り付けているため、劣化で外れて、削った歯が虫歯や歯周病になってしまう可能性があります。
新たなブリッジを作り、入れ直して再治療、もしくは既に土台の歯が長持ちしそうもない場合は、もう一つ隣の歯を土台にすることにもなりかねません。
プラスチックの入れ歯は、すり減ってしまい、吸水性があるため、変形や着色、汚れもつきやすいです。
入れ歯は、汚れがたまりやすいので、歯石がたまってくると入れ歯が変形して合わなくなってきたりします。
まわりの歯が虫歯になりやすく抜けてしまい、残っている歯の形が変わるため、また新たな入れ歯を作り直さなければならなくなります。
入れ歯のような取り外しが不要
入れ歯のお悩みの一つは、食事のあとや就寝時に取り外して、お手入れをしなければならないことです。
インプラントの場合は、歯がない状態を見られたらどうしようという不安がないため、毎日気にせず生活できます。インプラント治療するまでは、旅行に行きたくなかったけれども、楽しめるようになったと言われる方がたくさんおられます。
あごの骨が痩せるのを防ぐ
天然の歯は歯の根っこが、歯茎やあごの骨に埋まっています。
骨の細胞は、噛むことの刺激によって骨を形成しようとする性質がありますが、歯を失うとその刺激がなくなり骨が衰えてしまいます。
ブリッジや入れ歯は、歯を支える土台が骨ではなく隣接する歯なので、土台の骨が痩せてくると口内全体に影響を及ぼし、健康な歯にも悪影響が出てしまいます。
インプラントは、歯の根っこの代わりに、インプラント本体を埋めるため、噛む刺激があごの骨に伝わり、骨が痩せるのを防ぎます。
奥歯のインプラント治療を行う際のデメリット・リスク
奥歯のインプラントを行う際には、骨の高さや量が十分でないと治療が難しいデメリットがあります。
インプラントを埋め込む骨を増やすために、GBRやサイナスリフトなどの骨を増強する治療を行い、十分な骨量を確保することでインプラント治療ができるようになります。
ただし、骨造成や骨移植は治療可能な歯科医院が限られています。治療が可能かどうかを事前に相談することをおすすめします。
前歯のインプラント治療を行う際のデメリット・リスク
前歯は外から見えやすく、見た目に影響することから、歯の色と形がイメージと異なることがないように、歯科医師との細かいすり合わせが必要になります。
また、骨や歯肉が薄い場合には、骨を増やす治療や歯茎を増やす治療をインプラントと共に行う必要がありますが、対応していない歯科医院も多くあります。
歯肉が下がってしまう可能性などもあるため、一度歯科医師に相談することをおすすめします。
All-on-4(オールオン4)治療を行う際のリスク・デメリット
オールオン4とは、奥のインプラントを骨のある部分へ斜めに埋入して、インプラントにかかる力を広く均等に配分することにより、少ない本数のインプラントでも全ての人工歯を支えることができる方法です。
通常のインプラントと同じ様に、歯周病の恐れがあるため、定期的なメンテナンスが必要になります。
また、保険適応の入れ歯と比べて高額になることがあるため注意が必要です。
インプラントの特徴
インプラントは治療の期間は長くかかる反面、固いものが噛みにくい入れ歯やブリッジと比べると、天然の歯と同様に自立しているため、しっかりと噛むことができます。
ブリッジは、ほぼ天然の歯と同様に噛むことができますが、過度な負担には耐えることができません。
噛む力への耐性で比較すると、インプラントが一番優れています。
インプラントの治療を検討するときのポイント
インプラント治療をご検討されている方は、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 歯への負担を検討する
- 治療までの期間を確認する
歯への負担を検討する
インプラントの最大の特徴は、他の歯に負担をかけずに独立していることです。
安定性・耐久性に優れ、しっかりと噛むことができる上に、見た目も自然で元々の歯と大きな差がない口元にできる点が特徴として挙げられます。
元々ある自然の歯への負担を考慮して、自分に合った治療を検討しましょう。
治療までの期間を確認する
- 治療期間を短く済ませたい
- 費用をできるだけ安くしたい
- 手術はしたくない
上記に当てはまる方には、インプラントの治療が適しているとは言えません。
患者さまのご希望やお口の中の状態によって適した治療は異なります。
他の治療方法や費用のこと、セカンドオピニオンの利用などで様々な方面から検討され、ご自身が納得されて治療を受けられることが重要です。
セカンドオピニオンについて詳しい情報はこちらを参照ください。
▶セカンドオピニオンについて
インプラントは、いくつかのデメリットがありますが、逆に多くのメリットもあります。
- しっかり噛みたい
- 見た目や使いやすさに比重をおきたい
上記を望まれる方はインプラント治療が最適となる場合があるので、一度歯科医師に相談することをおすすめします。
インプラント治療の流れ
インプラントを実際に行う際には、以下の流れに沿って治療を進めます。
- 問診・検査
- 手術
- 被せ物を取り付ける
以下で当院のインプラント治療方法について詳しく解説します。
問診・検査
当院では、安全で確実なインプラント手術を行うために、レントゲン(平面撮影)とCTスキャン(立体撮影)を行います。
骨の状態を詳細に判別することで、より確実な治療を提供することができます。
CTとレントゲンなどの検査結果から、費用や治療の期間を含めて、患者さまにとって最善の治療方法になるようご提案します。
治療方法が決定したら、ご自身の都合なども考慮し手術日を決定します。
手術
インプラント治療は一次手術と二次手術の合計2回手術を行います。
一次手術では、歯茎を切開し、あごの骨にインプラントを埋入する穴を開け、インプラントを入れます。
その後、骨とインプラントが結合するのを待つため、二次手術の開始まで3ヶ月〜5ヶ月の時間を要します。
二次手術では、骨とインプラントがしっかりと結合したら、再び切開してインプラントと上の被せ物を連結するアバットメント(土台)を装着します。
被せ物を取り付ける
処置後、1週間〜2週間ほど待って歯茎の形が整ったら、歯と歯茎の型取りを行い、被せ物を製作します。
型取りをして製作した被せ物を土台(アバットメント)に装着し、かみ合わせ等を調整し、完了です。
インプラントの治療は相談から
手術のことなどマイナスのイメージが高いインプラントではありますが、残っている歯を長持ちさせることができる治療方法です。
インプラントは患者さまの体の一部になる治療です。デメリットや注意点を理解した上で、歯科医師への相談も含めじっくりと検討しましょう。