奥歯のインプラントの必要性
奥歯を失うと前歯もなくなる?
虫歯や歯周病などによって奥歯を失ってしまった場合、
- 「1本だけなら噛むことに支障がない」
- 「奥歯だから見た目に問題がない」
と放置していませんか?
奥歯が抜けることで、噛み合わせに不都合がおこり、他の歯へ負担が大きくなります。
そして健康な歯も悪くなり、前歯まで失ってしまう可能性があります。
奥歯の喪失を放置した場合に起こりうる危険と治療方法についてご説明します。
奥歯の大切な役割
奥歯は顎の上下左右の奥から3本ずつに該当し、「臼」のような形をしています。
前歯は食べ物を噛み切り、奥歯は食べ物をすり潰すことに優れています。
奥歯は、歯の中で一番強く噛む力を支えており、大きな力にも耐えています。 つまり、食べ物を噛むために最も重要な役割を担っているのです。
また噛み合わせの基本となる大切な歯でもあります。
より詳しい内容はこちらもご確認ください
外部リンク:歯の喪失の原因 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
ものを噛む
奥歯は、ものを「噛む」ことに特に重要な歯です。
奥歯を1本失うと噛む力は30〜40%低下し、食べ物の消化・吸収が悪くなると言われています。
発音
歯を失うと、そこから息が漏れてしまい「発音」がはっきりしなくなります。特に「ラ行」の音が発音が不明瞭になると言われています。
歯並びや顔の輪郭形成
奥歯を失ったままにしておくと噛み合わせが狂い、やがて顔の輪郭にも影響を及ぼします。失った歯の周りの骨がなくなっていくことでも輪郭に影響を与えます。
瞬発力
奥歯で「噛みしめる」ことは「瞬発力」と大きく関係しており、スポーツだけではなく、重たいものを持つ時にもその力は使われています。噛みしめないと、十分な力を出せないことが知られています。
出典:吉田光由ほか「口腔機能向上が運動器の機能向上、栄養改善にもたらす効果」
(京府医大誌 121(10),549〜556,2012)より
記憶力
奥歯がないと、脳への信号が減り記憶力にも影響が出る可能性を示す研究もあります。
瞬発力
歯には大きな力がかかっています
ものを噛む時、男性の奥歯で約60kg、女性でも約40kg、およそ、人の噛む力は50kgの力がかかっていると言われています。
また思いっきり噛み締めた時は約70kgとされています。 食事中はもちろん、寝ているときの歯ぎしりは無自覚な分強い力で噛みしめていて歯に大きな負荷がかかります。
歯には大きな力がかかっています
奥歯がダメになったらお口全体がだめになる?
奥歯の噛む力は想像以上に大きな力がかかっています。
- 奥歯がなくなると、残りの歯へ負荷がかかり疲労しやすい
- 歯のないところに歯は傾くため、噛み合わせが変わり歯並びが崩れ、歯磨きがやりにくい
などが原因で、虫歯や歯周病になりやすく、歯が折れやすくなったり、健康な歯が悪くなる可能性があります。
また奥歯が噛み合わせの高さを決めているため、今まで取れていたお口のバランスが崩れます。人の歯は上下の歯全てがしっかり噛み合っていることが理想的です。噛み合わせがずれると歯以外にも様々な不調がおきてしまいます。
はじめは1本だけの問題であっても、徐々に健康な歯にも体にも問題がおきてしまいます。
奥歯を失ったまま放置にしていると全身にも悪影響
歯を抜けたままにしていると、お口だけの問題だけに止まらず体全体にも影響がでてきます。
奥歯を失ったまま放置にしていると全身にも悪影響
奥歯のインプラントのメリット
奥歯を失った時、インプラント治療を選ぶメリットを5つ紹介します。
1:入れ歯のように違和感や痛みがない
奥歯は前歯とはちがい大きな力がかかります。
入れ歯は強く噛むと歯茎にあたり痛みを感じることがありますが、インプラントは自分の歯のように噛めるため、入れ歯のような違和感がありません。特に入れ歯が合っていない場合は、より痛みが発生します。ブリッジも同様です。
2:しっかり噛めるようになる
歯を失った時の治療方法の中で、噛む力が天然歯に近いのはインプラントです。
天然歯と入れ歯・ブリッジ・インプラントの噛む力の比較
-
- 入れ歯の噛む力は天然歯の30〜40%
- ブリッジの噛む力は天然歯の約60%(但しブリッジを行う歯の状態による)
- インプラントは天然歯とほぼ同じ インプラントの素材であるチタンは、骨に埋め込むと周囲の組織と結合する性質があるため時間の経過と共に
- ようになります。
3:発音しやすくなる
奥歯は発音に影響しています。奥歯がないと、そこから息が漏れるので「ラ行」の発音や「き」「し」「ち」などの「イ段」の発音がうまくできないことがあります。
また入れ歯が合わない場合は話していると、ずれたり外れたりすることがありますが、インプラントにすると会話中のストレスが軽減されます
3:発音しやすくなる
4:顎の骨の吸収を抑える
歯がないと歯を支える顎の骨は痩せてしまいます。
入れ歯やブリッジの場合、骨に刺激が伝わらないため、骨の吸収が進んでしまいます。一方、インプラントは骨に埋め込むことで、しっかり噛めるため、刺激が骨に伝わり、顎の骨の吸収を抑えることができます。
5:噛み合わせのバランスが整う
奥歯を失うと、歯に加わる力が偏るため、噛み合わせのバランスが崩れてしまいます。そのため、肩こりや頭痛、顔の輪郭の歪みなどがおこります。インプラントで噛み合わせを調整し体全体のバランスを整えます。
奥歯のインプラントのデメリット
保険診療が適用されない
他の治療方法と比較すると、保険診療が適用されないため、全額自己負担の治療となります(自由診療)。また、自費の入れ歯・ブリッジと比較しても高くなります。
治療期間が長くなる
骨とインプラントを結合させる時間が必要なため、入れ歯やブリッジと比較するとインプラントの治療は長くかかります。
顎の骨の量が足りない場合は骨の造成が必要
インプラントの治療は、骨の高さや量が十分でないと行うことができません。
骨を増やす治療であるGBRやサイナスリフトなどを行い、十分は骨量を確保することでインプラント治療ができるようになります。ただし骨造成や骨移植は、できる歯科医院が限られています。
奥歯って見えないのになぜインプラントにするの?
特に失いやすい奥歯
2016年度の歯科疾患実態調査(厚生労働省)によると、歯周病や虫歯が原因で歯は奥歯から失いやすいという結果が出ています。
奥歯は前の歯より力がかかることや、歯ブラシが届きにくいことが原因で、前歯よりも寿命が短くなってしまうからと考えられています。
奥歯を失ってしまうと手前の小臼歯という歯に大きな力が加わり、この歯が悪くなり失ってしまうことにもなりかねません。 隣合う歯を失わないためにも失った歯を補う治療をするべきなのです。
隣合う奥歯を失わないために
失った歯を補うためには、入れ歯・ブリッジ・インプラントという選択肢があります。
・部分入れ歯は、隣接する歯に金属のバネをひっかけて使用するため、 隣の歯に負担がかかってしまいます。
・ブリッジも両隣の歯を削って被せ物でブリッジをかけます。
どちらの治療も健康な歯を削るため、将来的に隣接する歯を失う可能性が高くなります。
また、一番奥の歯はブリッジの治療を行うことができません。部分入れ歯かインプラント治療のいずれかになります。
見えない奥歯をインプラントにするなんて
奥歯は見えない歯だからインプラントにするなんてと 思われているかもしれません。
インプラントの最大のメリットは隣接する歯を傷つけずに噛む機能を取り戻せること、 そして噛む力が大きくかかる奥歯だからこそインプラントにする価値があると思います。
奥歯のインプラント治療時の注意点
奥歯のインプラントは大きな負荷がかかります
奥歯の大切な機能はものを「噛む」こと。
特に奥歯は大きな力がかかるため、インプラントの長所が十分に生かされる部位だと言えます。
それに伴い、インプラントに高い機能性が求められるため、十分な注意が必要です。
CTでしっかり診断されることが必要不可欠です
インプラントの治療では、歯科用のCTの画像を用いて血管や神経の位置を立体的に確認し治療計画をされなければなりません。
上の奥歯の場合、鼻の両脇にある上顎洞と呼ばれる空洞があるため、骨の高さが不足することがあります。そのため、CT画像をもとにインプラントを入れる角度や深さをしっかりと検討する必要があります。CTでの確認を怠った結果、突き抜けてしまい炎症を起こすケースが報告されています。
下の奥歯(下顎)の場合、下顎管には、神経や血管が走行しています。インプラントを埋入させる際、下顎管を傷つける恐れがあるためCT画像で位置を確認しておかなければなりません。確認を怠った結果、傷つけると神経麻痺など起きるケースも報告されています。
全身疾患に関して事前にご相談下さい
インプラント治療では骨との結合が不可欠です。
糖尿病や心疾患、骨粗しょう症、貧血など全身疾患の場合、程度によってはインプラント治療ができない場合もございます。担当医にご相談下さい。また喫煙は骨の結合を妨げます。インプラント周囲炎をひきおこす原因になるため、喫煙される方は、担当者と相談し、計画的に禁煙を進めましょう。
インプラント周囲炎に注意
特に、歯周病によく似たインプラント歯周炎は、歯茎の腫れや出血、インプラントの動揺、最終的にはインプラントの脱落を引き起こします。
インプラント周囲炎の早期発見、早期治療するためにメンテナンスを必ず受けることが大切です。
インプラントやその周囲組織の状態を確認し、正しい歯磨きのアドバイスやインプラントの周囲のクリーニングを行うことで、インプラントの成功率や生存率が高まります。
当院の奥歯のインプラント治療の費用
奥歯1本
インプラント
かぶせ物(セラミック)
その他の費用
(CT、その他レントゲン撮影、診断料)
検査
骨の造成が必要な場合
骨が不足している部分に骨を増やし、歯のない部分にインプラントを1本挿入してかぶせ物をします。
GBR法
サイナスリフト法
上あごの奥歯のインプラントは難しい?
下あごよりも難しい理由
上あごの骨は下あごよりも、骨の表面の硬い部分の骨(皮質骨)が薄く、 骨の内部の網目状の部分(海面骨)が多いため骨が柔らかいことや、 目の下と鼻の横には上顎洞(サイナス)と呼ばれる空洞があるため、 しっかりと歯があっても、顎の骨が薄いことが多いのです。
骨が薄いと上顎洞をインプラントが突き破ってしまい、炎症や感染症を起こしてしまうリスクがあります。
このように上あごの奥歯の治療は、顎の骨が薄いため骨の再生治療が必要であったり、上顎洞など様々な組織と近接していたりすることが多いため、高い技術力を要する部位といえます。
下あごよりも難しい理由
上あごの骨が足りない場合の治療方法
上あごの骨の厚さが不足しており、インプラントができないと言われる方でも 骨を増やすサイナスリフトやソケットリフトでインプラントの治療を行うことができます。 骨を増やすことによって治療が可能になるだけでなく、安全性、長期的な安定性が高くなります。
骨を増やす治療について
下あごよりも、
・上あごの方が骨を増やす治療を行う確率が高い上に、
・上顎洞を損傷させないように繊細な手術の技術や、
・3D画像での正確な距離の把握など
治療をできる歯科医師は限られており、経験とスキルが求められます。
奥歯は重要な役割を担っています
奥歯を失ったにもかかわらず、「目立たないから」「ものを噛むのに不自由していないから」と放ったままにしていませんか?
そのままにしていると、噛み合わせが崩れ、健康な歯まで影響が及び、治療が複雑になります。また体へも悪影響がおよびます。
損失を最小限に抑えるためにもできるだけ早く治療をおすすめいたします。